『テレクラの人々』
 暇つぶしに自宅からシオリンがテレクラに電話をかけた。相手の善之はなにかにつけ「会おう」と言う。のらりくらりと逃げ続けるシオリン。やがて、男は女に一緒になにもかもから逃げようと言い出した。パスポート持ってこれから成田へ行って、どこか南の国で暮らそうと誘われる。

 今はもう携帯の出会い系サイトというものにとって変わられてしまったのですが、古くは「伝言ダイヤル」そして「テレクラ」というコミュニケーションの手段に、とても興味がありました。新しい物が技術者の手によって生み出された時、それが人々の欲求を満たしてくれるものであるなら、ヒットしてあっという間に普及するものなのです。ビデオが爆発的に売れたのはTV番組が手軽に録画できるからではなくて、みんながAVを見るためだったというのは、今では当たり前の話になっています。ではなぜ「伝言ダイヤル」や「テレクラ」が普及したのでしょう。それは単純に「人は誰かといつも出会いたいと思っている」ということに他ならないのではないか、と思うのです。人は誰に出会いたいのか? どんな人を求めて「伝言」「テレクラ」を利用するのか? もちろん、セックスが大きなウエイトを占めているのはわかっています。でも、それが全てではないはずです。そうではないとしたら? 人はどんな人に出会いたいのだろう? それはきっと、自分をどこかに今すぐ、ここではないどこかへ、連れ去ってくれる人なのではないか? というところから生まれた作品です。